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2012年4月27日金曜日

[CDレビュー]  ABYSS「in the wonder world」


ABYSS「 in the wonder world」
 (1997/12/26) 

1. INST ~lake in neverland~ 
2. love is love 
3. INST ~wind forest~ 
4. mirage
5. INST ~breath in the basement~ 
6. selfish 
7. INST ~big apple shuffle~ 
8. sunday
9. INST ~echoes in the ashtray~ 
10. obscure moon 
11. INST ~briage over sweet music~ 
12. loop
13. INST ~squall on the rainbow~ 
14. you don't know 
15. INST ~kitchen in the daylight~
16. one fine day 
17. INST ~preparation~ 
18. tender is the night
お気に入り度:★★★★★★★★☆ (8.5/10)





90年代に、モーニング娘。、CHEMISTRY、鈴木亜美などといったスターを世に送り出した
オーディション番組「ASAYAN」をきっかけにデビューした、小林優美のソロプロジェクト、
ABYSSの最初で最後のアルバム。

この頃の「ASAYAN」では、「コムロギャルソン」という、小室哲哉プロデュースによる
女性ボーカリストオーディション企画が、番組の中心企画でした。
このオーディションの中で、小林優美さんは最終選考にまで残り、一度は落選するも、
番組を見ていた別のプロデューサー、その名はT2ya(テツヤ)という、
小室哲哉とは全く別人の作曲家に見い出される形で、歌手デビューが実現することに。


そして、T2yaプロデュースにより作られたこの作品は、
アジアや中近東の香りを感じる、大陸的ディスコサウンドとでもいう、
当時のJ-POPシーンには無かったような音楽。
様々な民族楽器の音と、電子音やDJのスクラッチ音が同居するダンス音楽なんてのは
今の時代においてもそう滅多にあるものではないでしょう。
さらに楽曲の特徴としては、シングル曲である2、4、12曲目などを中心に、
サビにて早口でまくしたてるようなメロディの曲が多いです。
そしてこれらの曲を歌う小林優美さんの、ボーカリストとしての最大の武器は、
透明感抜群の声質。デビューしたばかりということもあって歌唱力は発展途上という感じでした。
そんな彼女に、こんな前衛的かつ歌いこなすのが難しい曲を歌わせてしまうとは・・・

こんな作品を90年代の時点で作ってしまっていたというのだからすごい。
型破りな発想の元に作られた、奥の深い作品です。
これはやはりT2yaさんが、あっちの哲哉さんには負けじと、作曲家・プロデューサーとしての
意地をかけて、新たな形のダンスミュージックを提案したのだろうなと思いました。
デビュー曲「loop」と2ndシングル曲「mirage」をリアルタイムで聴いた10代の頃は
そこまで良さが分からなかったのですが、しかし今になって聴いてみると、
聴けば聴くほどにスゴい音楽だなと・・・特に「mirage」は、全ASAYAN出身歌手の曲の中でも
トップクラスの、隠れた超名曲でしょう。これだけでもこの作品を聴く価値がある!

こういうアップテンポ曲をもっと聴きたかった。アルバムの後半の方には
透明感のあるボーカルが生かされた、バラード系の曲も入っていますが
それよりもシングル曲の早口でまくしたてるダンスナンバーの方が楽曲的には断然良い。
そんな中でやっぱり個人的に気になったのは、このアルバムの楽曲リストを見ても分かる通り
曲と曲の間の全てに、1分弱の短いインストが入っているということ。
そこまでの徹底的なこだわりを持って作られたアルバム作品だということは伝わってきますが、
インストを除くと実質9曲、これで価格は3000円とするぐらいなら、
やはり実質9曲なんていわずもっと曲を聴きたかったです。

しかし、あまりに個性の強すぎる楽曲に世間が追いつかなかったのか、
残念ながら売れることはできず、結局この1枚しかアルバムをリリースできませんでした。
その後小林さんは台湾に進出して女優兼歌手になったようですが・・・


またこんな楽曲を歌ってくれる歌手が現れたらぜひ聴いてみたいです。


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