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2019年12月30日月曜日

[CDアルバムレビュー]  MOROHA「MOROHA IV」


MOROHA「 MOROHA IV(初回限定盤)(DVD付)」
(2019/5/29)

1. ストロンガー  [公式PV]
2. 上京タワー  [公式PV]
3. 遠郷タワー  [公式PV]
4. 米
5. 拝啓、MCアフロ様  [公式PV]
6. スタミナ太郎
7. 夜に数えて
8. いくつものいつもの
9. うぬぼれ
10. 五文銭  [公式PV]
お気に入り度:★★★★★★★★★ (9/10)



MOROHAの通算4枚目のオリジナルアルバムにしてメジャー1stアルバム。
若手トップクラスに魂のこもった歌を聴かせる男性ボーカリストである
MCアフロ様(なお髪型は坊主頭)と、アコギ担当のUKさんによる2人組ユニットの作品。
アコギ弾き語り形式によるポエトリーリーディングという独自のスタイルは
今作でも健在。そもそも今作も収録曲のタイトルの「スタミナ太郎」を見た時点から
確実にハマるだろうなと思ったのは自分が食欲旺盛リスナーだからでしょうね。
その予想したものとは一部違う所もあったが、確実にハマるというのは当たりでした。

まず1曲目「ストロンガー」の序盤の歌詞のメッセージからしていきなり感動した。
怒りや痛みや屈辱や葛藤などといったものをエネルギーに変えて歌われる、
強くなりたいというメッセージ。そうなんだこれこそが音楽の持つ力だ。
音楽に求めるものは人それぞれであり、例えば心地よさだと答える人もいていいと思うが、
自分が音楽に求めているものは迫力、そして生きるためのエネルギーだ。
MOROHAの音楽はそういう者たちにとりわけ響くエネルギッシュな音楽。
苦しい時も頑張ろうと思えて、弱い自分を変えることだってできる音楽だ。

そして2曲目「上京タワー」は個人的にMOROHAを知ったきっかけとなった曲であり
今までに無かったような衝撃を受けた曲。こんなにもシンプルな弾き語り系楽曲なのに
なぜこんなにも躍動感に満ち溢れているのか。それでいて歌詞も人間味に溢れている。
「♪ふるさとの悪口で盛り上がるその瞬間 本当は包まれてる」
この終盤の歌詞は特に、自分みたいな根っからの田舎者には共感しまくりだ・・・
自分の住んでる所なんてまともな音楽フェスも無いし見やすいライブハウスすら無い所だが
MOROHAのお2人がそのライブハウスに来てくれたことがあるというのは嬉しかったので
また来て欲しいしその時は近くの世界遺産にも寄って鹿さんのぬくもりに包まれて下さい。
今回あらためてこの傑作曲を再録してくれて良かった。そのきっかけとなったのが
上京タワーの続編的な新曲である3曲目の「遠郷タワー」。サビで何度も噛みしめるように
「♪ふるさとを捨てて良かった と言えるようにならなくちゃ」と歌うところは
本当はふるさとが恋しくてたまらないんだという思いが伝わってくるしまたしても共感。

4曲目「米」は予想ではいっぱい米食って大きくなろうぜと歌う曲かと思いきや全然違った。
自身の経済的に苦しい姿を歌った曲で、米とは生きるために必要な食べ物。
これぞまさに生きるためのエネルギーを歌った曲だとも感じられる楽曲であり
やっぱり苦労してきた人たちの音楽は心に刺さる。

5曲目「拝啓、MCアフロ様」は母親からの手紙を歌にした曲で優しい一面が表れている。
6曲目「スタミナ太郎」は予想ではいっぱい米食って筋トレしようぜと歌う曲かと思いきや
全然違った。自身の高校生の頃を歌った曲であり、若き衝動(性的衝動を含む)を
こんなにもぶちまけるなんて恥ずかしくないのだろうかとも思ってしまう曲だった。
だがそれでも、例え他人からどう思われようが、なりふり構わずでっかい声で歌う。
こういう青春時代って素敵だなとも思ってしまうのは、自分の10代の頃がそれとは
あまりにもかけ離れていたからなのか・・・ 「♪誰とも違う奴になる」と
言った通りに現在は誰とも違う音楽をやっているわけだから有言実行ですよね。

7曲目「夜に数えて」は羊の数を数える姿を歌った歌詞がうまいなぁと思ったと同時に、
時には眠れなくなるほど必死に生きているんだという熱い思いが伝わる曲。
曲の終盤で自分を責める気持ちを歌うところにも思わず感情移入してしまう。
そんな聴き手に向けての慰めの言葉が、
「♪バカにされても見下されても お前は手を抜かなかったじゃないか」
これには泣かせてくれるなぁ。自分なんて見下されっぱなしの人生だったから尚更響く。

8曲目「いくつものいつもの」9曲目「うぬぼれ」ではしんみりとしたバラード曲を
連続で歌う。これまでの曲を聴いていると子供の頃から苦労を重ねてきた半面、
実家の父さんや母さんやおじいさんなどの家族愛には恵まれていたんだなということが
分かるしその大切さがしみる。だからこそ人間愛を歌えるんだなと。

そして10曲目「五文銭」は収録時間約8分の大作。まず曲の序盤では2017年の大晦日の
紅白歌合戦について歌う。「♪土手っ腹にはピストル」って竹原ピストルのことだな?
同じアコギ弾き語り系アーティストとして先を越されて悔しい気持ちが伝わってくるが、
竹原ピストルが紅白出場歌手になれたならば、MOROHAだって十分なれる可能性がある!
曲の後半でメロディの展開が変わるところもこの楽曲ならではの面白さを感じたし
最初聞いた時は長いかなとも思ったけど、こんなにも歌いたいことがたくさんあるという
必死な思いが伝わるから、ならば2度3度と聴いてみたくなる曲でしたね。

当ブログ的に音楽で重視する4つの要素といえば、まず第一に編曲であり、
その次にメロディ、ボーカル、歌詞という順番であるのだが、
ここまでボーカルと歌詞の2つの圧倒的魅力のみで聴き続けているアーティストは
他に思いつかない。個人的にはサビ部分でメロディアスな歌メロを入れた楽曲だったり
アコギ以外の数多くの楽器を取り入れて編曲した楽曲が半分ぐらいあっても
全然良いと思ってるのだが、今作でもそういったことは一切やらずに愚直なまでに
アコギとラップ歌唱のみで勝負という自分達のスタイルを貫いているところには
信念を感じられる。そもそもエレキギターのギターソロがこう来てストリングスがこう来て
電子音がこう入る編曲が最高だとかそんなことばかり書いている当ブログが取り上げる
アーティストとしては異質にも程がある。だが異質でも好きになることがある。
これこそが音楽が持つ面白さであり、音楽が持つ無限の可能性だと思う。
そしてやっぱりジャンルなんてのは関係無く、魂のこもった音楽こそが素晴らしいんだと、
MOROHAの曲を聴けばあらためてそう思えた。今作にてめでたくメジャー進出を果たしたが、
どうかこれからもこの調子で自分の色を思う存分に出し続けて欲しい。
それに共感する人がついてくればいいし、きっと多くの人の心に届く可能性のある音楽だ。






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